令和5年度海外教育連携教員派遣報告
本柳 仁 准教授 (カナダ?ウォータールー大学)

所属 分子化学系 准教授
氏名 本柳 仁
期間 令和5年7月21日-令和5年8月25日
滞在先 ウォータールー大学(カナダ)

 カナダで最も大きい都市であるトロントの郊外に位置するウォータールーにあるオンタリオ州立ウォータールー大学に、2023年7月下旬から8月下旬まで滞在しました。ウォータールーには、理工系学部を中心とする総合大学のウォータールー大学と人文系学部を中心とする国立のウィルフリッド?ローリエ大学があり、多くの学生や留学生が生活をする学園都市です。また、ブラックベリーをはじめとする著名な企業が拠点を置いており、産学の研究?経済活動が活発な地域となります。また、ウォータールーは、トロントから高速バスで2時間ほどの距離に位置し、人口12万人程度の比較的小規模の都市ですが、バス路線やライトレールなどの公共交通機関が充実しています。さらに、大学近くには、スーパーマーケットやレストランが多数あり、郊外にはショッピングモールやマーケットがあるため非常に暮らしやすい環境でした。また、買い物のレジでは必ず挨拶をされ、街中でも歩いていると挨拶をしあうような人情あふれる地域でした。

 ウォータールー大学は、設立当初からコンピューターサイエンス分野に特化した研究を展開し、比較的新しい大学(1957年設立)であるにもかかわらず、先進的な研究機関を有する大学として位置づけられています。また、2018年にノーベル物理学賞を受賞したドナ?ストリックランド教授に代表されるようにトップクラスの研究活動を行っています。また、ウォータールー大学には、3万人ほどの学生がおり、そのうち留学生の割合は、学部学生で2割程度、大学院生で4割程度と多くの留学生が在籍しています。留学生の大半は、インドと中国からの留学生が占めており、次いで、韓国からの留学生が在籍しているが、日本からの留学生はほとんどいません。冬のウォータールーは、寒く雪が多く降るため、大学の校舎間に渡り廊下が設置されています。そのため、校舎を伝って、外に出ることなく大学内を端から端まで移動できます。さらに、大学内の主要な建物には、カナダの有名なコーヒー店(Tim Hortons)が入っており、いつでもコーヒーとドーナッツを買って食べることができます。

 ウォータールー大学での講義は、秋期(9月~12月)?冬期(1月~4月)?春期(5月~8月)の3期制となっており、8月でも多くの学生が講義のため、大学に通っていました。このようなプログラムとなっているのは、大学の特徴である”Co-op Program”のためで、”Co-op Program”は、学生が地域の企業や政府などで4カ月ほど働き(インターンシップと異なり給与が支払われる)、自分のキャリアパスを考えながら修学するというプログラムとなっています。そのため多くの学生がすぐに就職先を決めることができています。
 さて、実験についてですが、私はPrince研究室に所属し、一か月間研究活動を行いました。Prince研究室は、高分子材料を使って細胞外マトリックスの模倣材料の創製を目指しており、基盤となる高分子材料の合成手法の開拓を主に研究しました。まず驚いた点は、安全教育が徹底していることです。安全関連のプログラムをおおよそ20科目程受講しないと、実験室に入れないだけでなく、デスクも使用できないというシステムでした。さらに、測定装置を使用するための講習でも、これらのプログラムが終了していないと受講できないため、はじめの3日間は、これらの講習を受講してすごしました。また、これらのプログラムはオンラインで受講することができ、1時間程度の英語の講義を聴いて、最終テストで80%以上のスコアが取れるまで、何度も受講する必要があります。これらの安全講習が終わって、やっと研究室に入室でき、実験をすることができます。次に驚いた点は、学部の2回生の学生でも、研究室で研究することができる制度があることです。成績が優秀で希望する学生は、早い段階から研究に触れることができ、指導教員とディスカッションをして知見を深めていくことができます。最後に、学生の発表を聞く機会があり、その際に驚いたのは、研究の実験結果だけでなく、研究の目的や展開について、非常によく理解している点です。なぜこのような実験をしているのか、研究結果についてどのようなことに利用可能なのかなどをしっかり説明していました。多くの学生が主体性を持ち、目的を明確に意識して大学に学びに来ていることに感銘しました。
 
 海外での滞在を通して、英語でのコミュニケーションを磨くことができたことに加えて、日本を離れ、生活習慣だけでなく、考え方や思想が異なる環境に身を置くことで、自分のことを改めて見つめ直すいい機会であったと思っています。今回の経験を今後の研究?教育活動に反映したいと考えています。

-謝辞-
 今回の海外派遣を受け入れてくださったElisabeth Prince先生および研究室の皆様に感謝申し上げます。また、海外派遣中に学生の御指導を頂きました箕田雅彦先生ならびに応用化学課程の先生方に心より御礼申し上げます。最後に、多方面でのサポートをしていただいたスーパーグローバル大学創成支援事業ならびに国際課の関係者の皆様に感謝申し上げます。

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