平成28年度海外教育連携教員派遣報告
松本 裕司 助教 (シンガポール国立大学)

所属 デザイン?建築学系
氏名 松本 裕司 助教
期間 平成28年7月18日-平成29年3月26日
滞在先 シンガポール国立大学(NUS) 星嘉波(シンガポール)

 

100年の歴史を誇るアジアのトップ校

 

  • はじめに

 シンガポール共和国はマレー半島の南端の赤道直下に位置する都市国家で、約700km?の国土に約550万人が暮らしています。そのうち約6割強がシンガポール人で、約4割弱が外国人(永住権保持者含む)です。シンガポール人といっても、中華系(約75%)、マレー系(約14%)、インド系(約9%)など民族、言語、宗教等様々です。

 シンガポール国立大学(NUS)は、1905年に設立された総合大学で、13学部、4大学院、学部生約28,000人、大学院生約10,000人、教員約2,400人、研究スタッフ約3,500人、職員約5,400人、キャンパスは甲子園球場39個分。とにかく大きい(本学の約10倍の規模)というのが一番の印象です。

学部のシンボルの大階段を使った新入生ミーティング

  • メリハリの利いた教育?研究とそれを支える環境とシステム

 私の受け入れ先である環境デザイン学部では、演習を中心とした実践的な教育が行われていました。その特徴の一つは、教育に専従する講師(Lecturer)の方々が中心となって演習プログラムを構築していることです。主担当の先生は、テーマ設定から進め方、ゲスト講師の手配、グループ担当教員の配置など、細かなところまで権限と責任をもって差配されており、おのずと特色ある演習が提供されていました。企業のスポンサーシップを得た実践的な課題に取り組む少人数の選択科目もあれば、私が主に関わった1年生の「建築設計演習」のように、1~3週間の課題ごとに外部の専門家が講義やワークショップを行うという、とても刺激的な内容の科目もありました。

演習の様子

 もう一つの特徴は、わが校のような「研究室」がないことです。わが校の上回生、院生のように、文字通り「部屋」に所属して教員?学生が密に連携して活動する物理的な場所がありません。多くの場合、予約制のゼミのみが指導教員との接点です。教員が募集するプロジェクトワークに参加する積極的な学生もいれば、学外のスクールに学習の場を求める学生もいます。この極めてドライなやり方が議論?問題(例えば継続的な研究の困難等)になることもしばしばあるようですが、お国柄もあいまってある程度は機能しているようです。その理由は主に2つ。幼少期からの厳しい受験戦争を勝ち抜いた学生達の自律的かつタフな気質と、手厚いサポート環境です。手厚いサポートとは、研究スタッフ、事務職員の充実はもとより、例えば、キャンパス中に豊富に遍在するテーブルやカフェ、演習室に隣接した教員室、数々のソフトが入ったPCルーム、デジタルファブリケーション設備、新入生のほぼ全員が暮らす学生寮、頻繁にあるランチパーティ等々が挙げられます。個の自律を前提としながらも、多様な学生達、教員達をつなげながら高効率の教育を支える工夫が随所に見られます。

レクチャーの様子

  • シンガポールに暮らしてみて

 私は家族を連れて渡星し、大学近くのコンドミニアムで生活しました。家賃と教育費の高さは覚悟の上での決断でしたが、緑も多く、治安も抜群で充実した海外生活となりました。ただ、最後まで家族のビザが下りなかったことが誤算でした。妻と5歳の息子は、ビザアピールと近隣諸国への小旅行(ミニ語学留学など含む)を繰り返しながらのハラハラした滞在となりましたが、幸い旅行好きなため貴重な経験になったようです。小学生以上のお子様をお連れの場合には深刻な状況になるのでシンガポールに限らず、慎重な配慮が必要だと感じました。

緑豊かな生活環境

 

  • おわりに

 今回、貴重な海外派遣の機会を与えて頂いた、本スーパーグローバル大学創成支援事業に御礼申し上げます。また、不在中の業務等で多大なるご支援頂いたデザイン経営工学課程 担当の先生方にも感謝いたします。