第12回OPEN TECHシンポジウムを開催しました ‐SGU事業‐
(テーマ:ゴム科学研究センター 第2回公開講演会)

 平成29年1月28日、本学の「OPEN-TECH INNOVATION」(スーパーグローバル創成支援(SGU)事業)では、天然高分子材料学研究室による平成28年度第12回OPEN TECHシンポジウムを、本学60周年記念館で開催し、3名の方に自身の研究に関してご講演いただきました。地域企業および本学学生や教職員など61名の来場がありました。

 最初の講演者は、タイ王国のチュラーロンコーン大学のSirilux Poompradub(シリラック プンプラダブ)准教授。先生は以前に京都大学で高分子化学の工学博士を取得された経験を持っており、現在は、ナノフィラー、例えば、ゾル-ゲル反応により天然ゴムマトリックス中に充てんされるin situシリカによる天然ゴムの補強と、天然ゴムや合成ゴムの伸長結晶化に関する研究を主に行っています。本講演では、産業用として考えられる環境に優しい海洋生物から得られるバイオフィラーを利用した天然ゴムの物性向上に関してご講演いただきました。また、私たちに学術的かつ商業的な観点からの高分子化学の重要性を説明していただくと共に、若い科学者に対しすばらしい研究をするようにと鼓舞してくださいました。
 次の講演者は、Atitaya Tohsan(アチタヤ トーサン)博士。先生は本学で博士を取得後、1年半の間本学のベンチャーラボラトリーでポスドクとして勤務された経験を持ち、現在はタイ王国のモンクット王工科大学北バンコク校で講師をされています。また、主にゴムの架橋機構と天然ゴムベース複合体の構造特性の関係に関して専門に研究されています。本講演では、先生のタイ王国のパッタニでの学部時代の研究から京都での博士課程の研究に至る、これまでの研究生活についてご講演いただき、さらに研究に関して、ソフトプロセスにより作製されたゴム複合体におけるフィラーネットワークのモデルを用いたゴムの補強機構や、天然ゴムナノ複合体における伸長結晶化の新たな概念についてご講演いただきました。
 最後の講演者は、東北大学の高橋征司准教授。先生は筑波大学で博士課程を取得され、現在は植物の分子生物学、生化学、代謝工学に関連した研究を行っています。本講演では、ヘベア天然ゴムの複雑な生合成メカニズムについてご説明いただきました。本講演での内容は、従来まで一般的な天然ゴムとして認知されてきたヘベア天然ゴムだけでなく、ラテックスを収穫できる他種の植物からも効率的に原料ゴムを得ることができるという画期的な説でした。

 本講演には学生だけでなく多くの会社の方々も参加されたため、学生にとっては講演者の研究から新しい学術的アイデアを得ることができたと同時に、産業的な視点からも討論ができる貴重な機会となりました。さらにこの国際セミナーは、本学の留学生と日本人学生の今後の研究に向けたモチベーションを高めるものとして大変意義深いものでした。

  • 会場の様子会場の様子
  • 質疑応答の様子質疑応答の様子