平成27年度海外教育連携教員派遣報告
足立馨 助教 (ブリティッシュコロンビア大学)

所属 分子化学系
氏名?職名 足立馨 助教
専門分野 高分子合成、反応性高分子、有機-無機複合材料
期間 2015年4月-2016年3月
滞在先 カナダ ブリティッシュコロンビア大学化学科

ブリティッシュコロンビア大学(UBC)

 ブリティッシュコロンビア大学(UBC)はカナダのブリティッシュコロンビア州にある州立大学で、1908年にマギル大学の分校として設立された後1915年に独立し、2015年で創立100周年を迎えた歴史のある総合大学である。UBCはカナダでは常にトップ3にランキングされる名門大学で、現在のカナダ首相をはじめ、多くの著名人を輩出している。バンクーバーのダウンタウンから西に約10キロ、ジョージア海峡に突き出た半島の先端全体がUBCのメインキャンパスになっており、そこで学部生約4万人と大学院生1万人が学んでいる。広大なキャンパスにはローズガーデンや人類学博物館、新渡戸記念庭園など多くの見所があり、観光に来る人も多い。またUBCには140を超える国々から留学生が集まっており、学生の約20%が留学生である。その内訳は中国からの留学生が約3300人と最も多く、続いてアメリカ(約1400人)、韓国(約470人)と続き、日本からの留学生は4番目の約300人となっている。

UBC図書館と時計塔 UBC化学棟

UBCの教育システム

Gates教授による基礎化学の講義

 UBCでは9月から4月までの8ヶ月のWinter Sessionに大部分の授業が行われる。Winter Sessionは2つのTerm(Term1とTerm2)に分かれており、それぞれのコースは各Termの4ヶ月で終了する。5月から8月までのSummer Sessionには主な授業は行われない。同大学は世界各国から留学生を受け入れているため、この長い期間に一時帰国や旅行をする学生もいるが、その期間、企業で働きながら学ぶインターンシッププログラム(Co-op education)も用意されている。このインターンシップが、その後の就職活動でも有利に働くこともあるため、多くの学生がこのプログラムに参加している。
 UBCの授業は1つのコース当たり週3コマ各1時間で構成されており、成績は出席?中間テスト、期末テストなどの総合的に評価される。1年次は主に大教室で授業が行われるが、学年が上がるごとに、より細分化された少人数の授業が行われている。私が大教室で行われていた基礎化学の授業を聴講した時は、黒板の裏に設置されたドラフトで実験を行ったり、学生の手元のボタンで回答させるクイズが出題されたりと、学生の興味を引きつける講義が行われていた。少人数の授業では座学だけでなく、スライドを作成して他の学生に発表するような授業形式も多く取り入れられている。最近ホットな研究を大学院生が紹介する授業も聴講したが、日頃からのプレゼンテーションの訓練のおかげか、学生は皆、発表が上手なのが印象的であった。

研究室での生活

Gates教授と

 私の受け入れ先であるDerek P Gates研究室ではポスドク3名、博士課程5名、修士課程2名、学部学生2名の合計12名が研究している。彼らの出身はカナダ、ドイツ、イギリス、中国、イランなどさまざまで、非常に国際色豊かな研究室である。研究室での生活は、週に2回のミーティング以外は各自に任せられているが、比較的朝型の人が多く、朝早く来て夕方早めに帰る人が多い。私は基本的に夜型人間なので、気がつくと研究室で一人ということもよくある。それで皆結果を出しているということは、オンオフの切り替えが上手なのだろう。 研究室は歴史を感じさせる重厚な建物の中にあるが、建物内部はきれいに改装され、近代的な作りになっている。

研究室での実験の様子

 研究室では個人に一つドラフトが与えられ、また基本的な測定は同じ建物内にある共通機器を利用できるなど、設備環境は整っている。また講演会が非常に多いのも特徴である。博士課程の学生が公聴会前に行う研究発表も含めると、ほぼ週に2回のペースで講演会が開かれている。講演会では学生も気軽に質問する環境が作られている。  設備環境や講演会以外にも、学生のモチベーションを高めるための、毎週のコーヒータイムや、Stressbustersと呼ばれるビアパーティーなどのイベントも頻繁に行われており、充実した研究生活を送れる環境になっている。クリスマス休暇直前に開かれたChemistry SKITSでは、有志の学生、教職員が入り交じって演じた寸劇が上映され、学科一丸となってクリスマスムードを盛り上げていたのが興味深い。なお、同時に開催されたくじ引き大会で見事一等を獲得したのは私である。

バンクーバーでの休日

グラウスマウンテンからバンクーバー市内を望む(半島の先端がUBC)

 バンクーバーは海と山に囲まれた自然が豊かな土地のため、アウトドアのアクティビティが盛んである。特に5月から9月までの夏場は乾期で晴天が続くため、休日ともなると多くの人がハイキングやビーチ、ジョギングなど、思い思いの時間を楽しむ様子が見られる。また多くのレストランはパティオに席を設けており、屋外での優雅な食事も一般的である。その反対に、冬は雨期のためほぼ毎日雨が降る。街のすぐそばの山では雪になり、そこではスキーやスノーボードなどのウインタースポーツが可能である。私も夏の休日にはハイキングやサイクリングをしたり、冬には街のすぐ北側にあるグラウスマウンテンまでスキーに行ったりしたが、特にグラウスマウンテンから見下ろすバンクーバーの街並みは非常に美しい。そういった美しい景色を見ると、気分がリフレッシュされ、また新たな気分で次の週を迎えられる気がする。

おわりに

 時間の経つのは早いもので、先日バンクーバーに来たばかりと思っていたら、あっという間に11ヶ月が過ぎ、帰国が間近に迫ってきた。今回の派遣の機会を与えてくださったスーパーグローバル大学創成支援事業関係者の皆様と、塚原安久先生そして分子化学系の先生方、ならびに受け入れ先のDerek P Gates教授に感謝するとともに、UBCで学んだ経験をこれからのキャリアで活かしていきたいと思う。